- ア
- 正しい
刑法256条1項。盗品等無償譲受け罪(刑法256条1項)は,盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって「領得された」物を無償で譲り受けることにより成立する犯罪であるから,本犯が既遂に達した後でなければ成立しない。よって,窃盗の現場で奪取しつつある財物の一部を無償で貰い受けても盗品等無償譲受け罪は成立せず,窃盗の共犯が問題となるにすぎない。従って,本記述は正しい。
- イ
- 誤 り
盗品等に関する罪については,財産犯の被害者が,被害財物に対して有する回復請求権(追求権)の実現を不可能若しくは困難にする罪とする見解(追求権説)がある。この見解によると,被害者に依頼されて盗品を被害者宅に運搬する場合,被害者の追求権の実現は侵害されていないため,盗品等運搬罪は成立しないとも考えられる。しかし判例は,基本的にはこの追求権説に立ちつつ,被害者に依頼されて盗品を被害者宅に運搬する場合でも,窃盗犯人の利益のために,盗品の返還を条件に被害者から多額の金員を得ようとして運搬した場合には,被害者の正常な回復を困難にしたものであるとして,盗品等運搬罪が成立すると判示した(最決昭27.7.10)。従って,本記述は誤っている。
- ウ
- 正しい
最決昭50.6.12。盗品であることを知らずに物品の保管を開始した後,盗品であることを知るに至ったのに,なおも本犯のためにその保管を継続したときは,盗品等保管罪が成立する(最決昭50.6.12)。従って,本記述は正しい。
- エ
- 正しい
大判大12.1.25。盗品等有償譲受け罪は,盗品等であることの事情を知った上で,売買や交換等の有償行為により盗品等を受領することによって成立し,単に盗品等の売買を約するだけでは成立しない(大判大12.1.25)。従って,本記述は正しい。
- オ
- 誤 り
盗品等に関する罪の本質は,盗品を転々して被害者の返還請求権の行使を困難若しくは不能にする点にあるから,盗品であることを知りながら盗品の売買を仲介周旋した事実があれば,その時点で被害者の返還請求権の行使を困難にする行為をしたといえるため,その周旋にかかる盗品の売買が成立しなくても,盗品等有償処分あっせん罪が成立する(最判昭23.11.9)。従って,本記述は誤っている。
以上により,誤っている記述はイとオであり,従って,正解は肢4となる。