解答
不正解
正解は、肢 2
正答率 : 7015/18619 ( 37.7% )
肢 |
回答 |
回答数 |
割合 |
1 | ア・イ | 3935 | 21.1% |
2 | ア・ウ | 7015 | 37.7% |
3 | イ・オ | 2310 | 12.4% |
4 | ウ・エ | 3370 | 18.1% |
5 | エ・オ | 1962 | 10.5% |
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民法:物権の混同:昭61-16,平3-22,平13-8,平16-8,平20-10
解説
- ア
- 誤 り
同一の「物」について,「所有権」と「他の物権」(=制限物権)とが同一人に帰属したときは,その制限物権は,存在する価値がないため,原則として混同により消滅する(民法179条1項本文)。ただし,例外的に,両者を存続せしめる価値がある場合には,混同は生じない。すなわち,その「物」が第三者の権利の目的となっている場合は,制限物権は消滅しない(民法179条1項ただし書)。例えば,同一の不動産に複数の抵当権が設定され,1番抵当権者が抵当不動産の所有権を取得したとしても,後順位抵当権者がいる限り1番抵当権は消滅しない(大判昭8.3.18)。もっとも,1番抵当権者が相続によって所有権を取得した場合のように,所有者の自己に対する債務をも相続する結果,抵当権の基礎である所有者に対する債権が混同によって消滅するときには(民法520条参照),たとえ2番抵当権があっても,1番抵当権は消滅する。よって,債権者BはAを単独相続することにより,被担保債権は混同により消滅し,第1順位の抵当権も付従性により消滅することになる。従って,本記述は誤っている。
- イ
- 正しい
大判大9.9.8。混同による物権消滅の効果は絶対的であるとされる。ただし,混同を生じさせた法律行為が取消し,解除などにより遡及的に失効した場合には,混同は生じなかったことになる(判例はこれを「復活」と表現する)。そして,地上権者が土地の所有者から買戻しの特約付で所有権を譲り受けた場合で,その後,売主が買戻権を行使すると,最初の契約は「解除」されることになる(民法579条前段)ので,いったん消滅した地上権が当然に復活することになる(大判大9.9.8)。よって,BがAから買戻し特約付で土地の所有権を譲り受けた後に,Aが買戻権を行使した結果,当初の契約は遡及的に消滅し,Bの有していた地上権が復活することになる。従って,本記述は正しい。
- ウ
- 誤 り
同一物を目的とする所有権と賃借権の関係は,民法179条1項にいう「所有権及び他の物権」にそのまま当てはまらないので,この相対立する2つの法律上の地位が同一人に帰属するに至った場合の効果をいかに解すべきかが問題となる。この点判例は,特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至った場合であっても,その賃借権が対抗要件を具備したものであり,かつ,その対抗要件を具備した後に右土地に抵当権が設定されていたときには,民法179条1項ただし書の準用により,賃借権は消滅しないものと解すべきであるとする(最判昭46.10.14)。以上について,上記判決はその理由を明らかにしていないが,この点につき同じ結論を採った第1審は,まず,対抗力ある物権化した賃借権は「物権」に準じて取り扱うのを至当とし,かつ,同条項ただし書の趣旨にもかなうからであるとし,賃借権が消滅するものとすると,本来その設定当時において賃借権による制約を受けていた抵当権は,その制限なきものとなって不当に有利な地位を獲得する反面,賃借権者はその抵当権の実行により,競落人に対する関係では土地の占有権原を失う結果となり不当に不利な地位に置かれることになる,従って,賃借権者のため所有権と賃借権を両立させる価値がある,としている(東京地判昭45.3.13)。本記述で,Bの有する甲土地の賃借権は対抗要件を具備し(借地借家法10条1項),かつ,Dの抵当権はその対抗要件を具備した後に設定されたものである。よって,その後Cの下に所有権と賃借権が帰属しても,民法179条1項ただし書の準用により,Cの賃借権は消滅せず,Eからの乙建物収去,及び甲土地明渡請求に応じる必要はない。従って,本記述は誤っている。
- エ
- 正しい
同一の不動産に複数の抵当権が設定され,1番抵当権者が抵当不動産の所有権を取得したとしても,後順位抵当権者がいる限り1番抵当権は消滅しない(大判昭8.3.18)。その理由を判例は必ずしも明らかにしていないが,混同による先順位抵当権の消滅を認めるとその抵当権者の負担において後順位抵当権者を不当に利得せしめるという不都合が生じる,という点にあるとされる。そして,この場合,同一人の下に抵当権者としての地位と所有権者としての地位が存在することになり,1番抵当権者として権利を行使することができ,後順位抵当権者に優先して弁済を受けることができるだけでなく,第三取得者として後順位抵当権の消滅を請求することもできる(民法379条)。よって,Bの抵当権は民法179条1項ただし書により消滅せず,Bは1番抵当権者として優先弁済を受けることも,第三取得者として後順位抵当権の消滅を請求することもできる。従って,本記述は正しい。
- オ
- 正しい
民法179条3項。占有権は,物の事実的支配状態を保護することを目的とし,本権と両立し得る権利であるから,本権と混同することによって消滅しない(民法179条3項)。よって,A所有の土地を占有するBが,その後当該土地の所有権を取得しても,Bの当該土地についての占有権は消滅しない。従って,本記述は正しい。
以上により,誤っている記述はアとウであり,従って,正解は肢2となる。
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