解答
不正解
正解は、肢 4
正答率 : 4353/14745 ( 29.5% )
肢 |
回答 |
回答数 |
割合 |
1 | ア・ウ | 3766 | 25.5% |
2 | ア・エ | 1749 | 11.9% |
3 | イ・エ | 2906 | 19.7% |
4 | イ・オ | 4353 | 29.5% |
5 | ウ・オ | 1949 | 13.2% |
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民法:占有者の権利義務:昭63-15,平1-6,平9-11,平14-11
解説
- ア
- 誤 り
善意の占有者は,占有物から生ずる果実を取得することができる(民法189条1項)。これは,善意占有者は果実を取得し消費するのが普通なので,後になって果実まで本権者に返還せよというのは,酷にすぎるからである。そこで,善意の占有者とは,果実を取得し消費することができる者,すなわち果実収取権を包含する本権(所有権,地上権など)があると誤信する占有者を指すと解されている。本記述の場合,Aは建物について留置権を有すると誤信しているが,留置権は果実収取権を包含しないので善意の占有者に当たらず,占有物から生ずる果実を取得することができない。従って,本記述は誤っている。
- イ
- 正しい
民法189条2項。善意の占有者は,占有物から生ずる果実を取得することができる(民法189条1項)。しかし,善意の占有者が,本権の訴えにおいて敗訴したときは,その起訴の時から悪意の占有者とみなされる(民法189条2項)。なぜなら,勝訴し得るような本権の訴えが本権者により提起された以上,その時以降善意占有としての果実収取権を認めることは不当といえるからである。本記述の場合,Aは当初無権原であることにつき善意であったが,その後Bから提起された本権の訴えについて敗訴しているので,Aは本権の訴えの提起時から悪意になる。従って,本記述は正しい。
- ウ
- 誤 り
善意の占有者は,その滅失又は損傷によって現存利益の限度において賠償をなす義務を負う(民法191条本文後段)。これは,本権があると誤信して占有している者に全損害を負担させることは酷にすぎるので,不当利得の原則に従って,現存利益の限度までその責任を軽減したものである。しかし,善意の占有者でも,所有の意思のない占有者(賃借人などの他主占有者)は,結局回復者に返還すべきものであることを知っているから,全部の損害を賠償しなければならない(民法191条ただし書)。本記述の場合,Aは建物をBから賃借していると誤信しており所有の意思がないので現存利益の限度でなく,全部の損害を賠償しなければならない。従って,本記述は誤っている。
- エ
- 誤 り
占有者が悪意の場合にも,善意の場合と同様に,有益費の償還請求権が認められているが,裁判所は,回復者の請求により,その償還につき相当の期限を許与することができる(民法196条2項ただし書)。これは,悪意の占有者が,故意に多額の有益費を支出することで留置権により回復者の返還請求権の行使を困難ならしめるという弊害に備えたものである。本記述の場合,Aが悪意であっても裁判所は回復者Bの請求により,その償還について相当の期限を許与することができるのみであり,期限を許与しなければならないわけではない。従って,本記述は誤っている。
- オ
- 正しい
民法196条1項ただし書。悪意の占有者も,必要費の償還請求権については,善意の占有者と同様の地位を与えられる(民法196条1項)。なぜなら,目的物が保存され,又はその価格が増せば,その結果は回復者の利益に帰するが,このことは,占有者の善意・悪意には関係がないからである。もっとも,占有者が果実を取得したときは,通常の必要費は占有者の負担に帰することになる(民法196条1項ただし書)。そして,占有者が自分で目的物を利用した場合にも,利用していたのが他人であれば法定果実が生じていたであろうといえるので,実質的には法定果実相当額を取得していたといえるから,民法196条1項ただし書が適用される。本記述の場合,Aは建物を自分で利用しているから,民法196条1項ただし書が適用され,必要費償還請求をすることができない。従って,本記述は正しい。
以上により,正しい記述はイとオであり,従って,正解は肢4となる。
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